「ファミコン必勝本」 1988年10月7日号 6ページ より |
インフォメーション 夏の終わりに、忽然と姿を現した『スーパーファミコン』報道。現ファミコンを越える、究極のゲーム機かその全貌を明らかにしようとしているのだ。気持ちを落ちつかせて、Let's Read!! |
任天堂社長、スーパーファミコンを語る!! 昨年9月9日付の京都新聞紙上で、任天堂社長、山内溥氏は『スーパーファミコン』という名を初めて公にした。そして、1年。再び山内社長の口が開かれた。しかも、「スーパーマリオブラザーズ4」「ドラゴンクエストX」という具体的なソフト名と共に。『スーパーファミコン』という、真に夢のような家庭用ゲーム機がその姿を徐々に現そうとしている。興奮を抑えきれず、必勝本編集部は、情報を分析し、ニューマシンの解明を試みた。『スーパーファミコン』は果してどんなハードか? そしてソフトの可能性は? じっくりお読みください。 |
発売日は?定価は?そしてスーパーファミコンの真の狙いは?
では、このビッグニュースにゲーム業界の人々はどう反応したかーー。 「発売日は来年春の線が濃厚。半導体不足が解消されるのが、その頃ですからね」と、報道の火ダネとなったタッチの記事の筆者、野々村文宏氏は予想する。同様に発売日については、年末年始ソフトが出払った時期で、しかもファミコン離れを早めに食い止めるとの理由から、「来春」との意見が多い。 次に、定価。値段の話になると業界内では意見が分かれた。 現在のファミコンと同じ¥14800から、PCエンジンと同じ¥24800まで、1万円の幅をもって憶測は飛びかう。また一時期噂になった、旧ファミコン下取り説については「任天堂とユーザーは得しますけど、玩具店やわれわれにはメリットが無い」(玩具流通関係者)との声もあり、実現は微妙だ。この下取り問題を解決した後、定価は決まると思われる。「2万円以上か? 以下か? によって商品の販売の仕方や家庭での使われ方が違ってくる。だから定価がいくらになるかによってゲームの将来は大きく変わる」。(前出・野々村氏)そんな意味でも定価は注目の的だ。 そして、山内社長に突然スーパーファミコン用ソフトとして白刃の矢を向けられた「ドラクエX」。さっそくエニックスに問い合わせてみた。 「山内社長から、うちの福島社長に非公式な形で申し入れがありましたが、具体的な進行はまだ。今、PCエンジンの動向を見ているのと同様に、未知のハードに対してはまず調査を重ねたいですね」との解答を広報担当者から得た。慎重なコメントながら、その可能性は十分にアリをにおわせた。また任天堂は、「スーマリ4とは別に現在開発しているゲームが3本あります。そのうちの2本の内容をハードと合せて公表したい」との考えを示した。ソフトは水面下で動いている。 スーパーファミコンの正式な記者発表は11月下旬を予定。この日程は、当面の対抗機種、PCエンジンの年末商戦へのけん制とも思われる。世に言う゛ハード戦争″がこの冬から始まる。しかも、生々しい人気ソフトのタイトル名が連呼されながら……である。夏の終わりに、突然鳴り響いた山内発言。任天堂は、何か“勝算”を見い出したのであろうか。 |
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「ファミコン必勝本」 1988年10月7日号 7ページ より |
スーパーファミコンはどんなマシンで何かできるのか?
スーパーファミコンはこれだけスゴくなる!! 超機能詳細予想! 名前に゛スーパー″と付けて呼ばれ、これだけの期待を一身に受けての登場だ。あやふやなものではなく、どれだげすごい″のか、ということについて触れていきたい。 必本編集部が総力を結集して集めた証言をもとに、その゛すごさ″を予想してみた。 ●処理の高速化 ●グラフィックやスクロールなどの画面表示能力の強化(キャラの縮小拡大も自由自在)。 ●通信機能の標準、あるいはオプションでの装備(従来より手軽に) ●将来性を含め、大衆に受け入れられるような拡張性。 などが考えられる。これらは、8ビット機が16ビット機になり、今まで゛ファミコンの限界″と言われてきた性能を改善したとしたら? を根拠にしての仮説である。それと、山内発言の「分衆マシンではなく大衆商品を!」の意図から。ゲーム以外の使いみちを持たせるのでは? との大前提を持っての予想だ。 では、これらの機能のおかげで実際のゲームでは、どこがどう変わるのか。 具体的な予測をしてみよう。 |
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現在のファミコンを改良するだけでここまで能力アップが可能だ!! |
現在のファミコンの欠点と改良点をリスト・アップしてみよう 1.グラフィック画面の付加 現在のファミコンは、キャラクタを表示するスクリーンと、バックグランドを表示するスクリーンは持っていたが、パソコンのように、1ドットごとに色を変えたり、自由に線を引いたりできるスクリーンを持っていなかっただから、グラフィックを表示するにも(例えば写真@のような)、小さなキャラクターを並べて、モザイクのように1枚の絵を造りあげることしかできなかったのだ。 スーパーファミコンでは、この弱点を克服。「リブルラブル」(写真A参照)のようにラインを多用するゲームも受け入れるような能力を手に入れるのではないか。 2.仮想画面の拡大 現在のファミコンの弱点としてバックグランドの狭さというものがある。 8方向ヘスクロールするようなアーケードマシンなどの場合、実際に表示されている面面の4倍(縦2倍の横2倍)の広さ、つまり4画面分のバックグランドが最低用意されている。 ではファミコンは?というと、これが、たったの2画面。実際に映っている部分の縦か横にしか、バックグランドを用意しておけないというわけだ(しかもたった1画面)。だから、上下左右にスクロールするゲーム(例えばドラクエ)の場合、プログラムでその弱点をおぎなってきたわけだ。 3.スプライト表示能力のアップ 「ドラクエ」のパーティーはなぜ4人なのか? 実は、キャラクターを動かしているスプライトには1画面上に表示できる個数の制限のほかにも、水平に並べられる個数にも限界があるのだ。だから、あれ以上の人数になると、横1例にパーティーが並んだときに、チラつきが出てしまう。PCエンジンは、この能力が高いから、あれだけのキャラクタを動かせるのだ。スーパーファミコンは拡大縮少も可能になるだろう。PCエンジンも真っ青のスプライト表示能力を持つだろうし、(写真B参照) 4.音源の強化 パソコンではもう常識となっているFM音源。スーパーファミコンではそれを越えるために、カスタムの音源チップを搭載するという。アーケードゲ−ム並の音が家庭でも聞けるようになるのだ。 5.拡張機能 ゲーム専門機に徹するか、本格的なホームコンピュータを目指すか、中途半端は許されそうにない。もし拡張機能にこだわるなら、キーボード、プリンター、さらにワープロ機能とスケールの大きな展開も十分ありえる。 |
理想を持ってこそスーパー!思想を持ってこそファミコンだ!! |
スーパーファミコンの性能は、目に見えないところ、たとえばRPGのシナリオなどの内部の情報処理にも、影響を与えるという。堀井雄二氏は語った。「ワークエリアが大きくなるだけでシナリオやイベントはグッと多彩になるはずです。今のファミコンは2K。これでは小さ過ぎる」と。このように細部においては、従来のファミコンの弱点を補うだけで、かなり高度なハード誕生!! の可能性が高い。 しかし「家庭用モニターを肉眼で見る限り、PCエンジンを上まわることはできない」との声もある。つまりグラフィックだけに頼るのではなく、ハード特性が、どんなゲームアイデアを生むか?が課題となるのは確実だ。 ファミコンと名のつく機種では2代目であり、またほとんどの家庭内でも2台目のコンピュータとなることを目指すスーパーファミコン。単なる勢いに乗って生まれたコンピュータか? 思想を持って生まれたコンピュータか? に視線を注ぎつつ、見守りたい。 |
⇒従来のグラフィックは、8×8のタイトルを並べて表現 | ⇒従来のマシンは、スクロールする画面の左右に、固定された部分を作れなかった。最新作「源平」でも、それがネックに… |
⇒新機種ではこんなゲームも楽にこなすような作画能力を | |
⇒PCエンジンでもチラついたこんな画面もスーパーなら |
◎ <スーパーファミコンの仕様> 16ビットで、CPUの石は現在のファミコンと互換性のある <65816> 使用。 サウンドチップは特注でソニーと共同開発。昨年噂された3.5インチディスクについては一言も語られなかった。
「ファミコン必勝本」 1988年10月21日号 8ページ より |
インフォメーション 前回、スクープした「スーパーファミコン」情報の続報をはじめ、都内各地で行なわれたイベントの横様をお知らせします。 |
どうなる!?スーパーファミコン 任天堂・山内溥社長、スーパーファミコンを語る!! 8月30日発売の「TOUCH」誌上での発言を発端に、新ハード『スーパーファミコン』をめぐる噂が、あちこちで囁かれるようになった。新聞紙上で、業界誌で、そして、君たち友達どうしの間でも、きっと話題になっているはず。『スーパーファミコン』のことなら、どんな小さなことでも知りたい君たちの要望に答えて、今回も『スーパーファミコン』追加情報をお届けします。おもちゃ屋さん・問屋さん、もちろんメーカーの皆さんにとっても興味深々の話題ですね。 |
来年8月発売・野球ゲーム登場の報道
16ビット機が確定、「ドラクエX」の可能性もあり!? と久々に派手なニュースが渦巻いた”スーパーファミコン”。その詳しい仕様等は、いまだにベールに包まれたままだが、その話題性は十分だった。この秋から冬にかけて発売・発表されるMSX2f、PCエンジン用CDロム、セガの16ビットニューマシンなどの新機種競争に大きな一石を投じた恰好になったといえるだろう。
そんな状況で、”不確定情報”のみが先行するスーパーファミコンだが、また新しい「噂」もいくつか登場した。
噂といっても、任天堂山内溥社長のコメントに端を発した報道からによるものなので、事実となるかもしれない。
ここに紹介しておこう。
@発売は来年8月。
これは9月 日付毎日新聞に掲載されたものである。ただし、「山内社長が直接8月と言い切ったわけではなく、インタビューのニュアンスで毎日新聞の記者の方が憶測されたのではないでしょうか?」と任天堂は否定的な態度を示している。
Aスーパーファミコン用に最高の野球ゲームを出す。
こちらはソフトの話。同じく山内社長が玩具業界誌「ビーヤングエイジ」の取材に答えたもので、誰もが遊べて、また市場も大きい野球ゲームに注目している。今までのものを超えた野球ゲームを出したいとの意向をもらした。この報道に対して任天堂は、「構想としてあってもおかしくはないでしょう。」と否定こそしないものの、机上での話に過ぎないことを強調した。
8月発売説と野球ゲーム開発説。いずれにしても、現実にありそうな話ではある。 11月21日のスーパーファミコン発表会の席上で明らかになるだろうか。
▲ファミコン野球ゲームの元祖、任天堂「ベースボール」。今から5年ほど前に発売された。もし任天堂から野球ゲームが出るとすると、久々の登場となる。確かに野球は新機種の草創期にふさわしいゲームジャンルといえるのだが…… |
“年10作主義”がソフトメーカーを揺るがす
ところで、「TOUCH」誌上で公表された山内社長(任天堂)のスーパーファミコン用ソフトは年間10本程度----の発言は、予想通りソフトメーカー各社に波紋を呼んだ。つまり各ソフトメーカーは、スーパーファミコン用ソフトを発売する゛資格″があるかどうか?早くも過敏な反応を見せた。「うちは10社の中に入ってますか?」と直接任天堂に問い合わせするメーカーが何社かあったという。任天堂はすでにソフトメーカー選びをはじめているとの話もあり、差しあたっては、自社開発能力が高いメーカーが参入する見通しになっている。ソフトメーカーの支援体制も不確定だ。